1.1 共同研究の目的



宇宙環境を人間の日常的な活動の場に拡張できるか否か、国際宇宙ステーションを利用した様々な試みが行われる。「宇宙環境の本質的な理解」、「宇宙における人間存在の意義の発見」、「宇宙環境の場を利用した科学技術と人文社会科学の新たな“総合”の試み」によって、人類が新たな自然観・人間観・世界観を共有する契機になることが期待される。
京都市立芸術大学と宇宙航空研究開発機構JAXA(旧・宇宙開発事業団)との共同研究「宇宙への芸術的アプローチに関する研究」では、創作活動や造形研究などの芸術の視点から宇宙と人間の関わりの本質を探究することを通じて、国際宇宙ステーションを人文社会学的観点から利用し人類が新たな自然観・人間観・世界観を共有する契機になることの可能性について検討する。

1.2 実施体制

本研究を実施するにあたり、京都市立芸術大学は美術学部福嶋敬恭を代表研究者として、宇宙航空研究開発機構(旧・宇宙開発事業団)は宇宙環境利用研究センター清水順一郎を代表研究者として、以下のメンバーで共同研究を実施した。

京都市立芸術大学
美術学部
福嶋敬恭
美術学部長 (代表研究者)
美術学部 野村 仁 教授
美術学部 池上俊郎 教授
美術学部 藤原隆男 教授
美術学部 井上明彦 助教授
美術学部 中原浩大 講師
美術学部 松井紫朗 助教授
美術学部 砥綿正之 助教授

JAXA(NASDA)
宇宙環境利用センター
清水順一郎
参事(代表研究者)
宇宙環境利用センター 吉冨 進 センター長
宇宙環境利用センター 荒木秀二 副主任開発部員

谷垣文章 副主任開発部員(平成15年度から)

浜田尚子 開発部員(平成14年度から)
宇宙環境利用推進部 山本雅文 主任開発部員(平成14年度まで)
有人プログラム推進室 福田義也 調査役

1.3 実施概要


本共同研究は平成13年度から3ヵ年にわたって共同研究を実施し、芸術実験空間の研究開発や、芸術実験シナリオおよび装置の研究開発、JAXAが所有する宇宙情報ソースのデータベース構築などをテーマとした下記のサブプロジェクトを実施した。最終的にはこれらの成果を基にして、最終報告書を製作する予定である。

( i ) KOKOROプロジェクト(微小重力環境における芸術実験)
微小重力環境を感覚的に提示することで、宇宙についての人々の直感的理解を促進すること、微小重力環境固有の感性的表現の可能性を探ること、宇宙での閉鎖空間における心的感性的なコミュニケーションのあり方を探ることにより、宇宙環境における人間の感覚の姿を純粋に引きだすことを足がかりとして、日本文化を活かした人類へのグローバルなメッセージの発信をめざす。

( ii ) COSMOSプロジェクト(基礎研究とデータベース構築)
JAXA およびNASA 内にある過去の画像等情報ソースや、未来に蓄積されていく情報ソースの調査・収集・分析を行い、研究プロジェクトへの利用や作品化の可能性をさぐる。上記の実験成果をインターネット上にデータベースとして広く公開し、多くの人々のアクセスや参加を促す。

( iii ) W-HEREプロジェクト(宇宙―地球の関係における芸術的コミュニケーションの実験とMUSEプロジェクトの社会化)
宇宙ステーションと地上という二つの「ここ(here )」の交わりと、広大な時空における人間の位置への問いかけ「私たちはどこ(where )にいるのか」をテーマに、宇宙と地上をつなぐ双方向的な芸術実験プログラムの検討を行うとともに、本プロジェクトの社会的公開のあり方を研究・実践する。


また、上記活動に資するため、下記の調査活動等を実施した。

(1)向井宇宙飛行士との意見交換
○ 目的:宇宙環境に対する理解を深めるため飛行士の宇宙実体験に基づく意見交換会を行った。
○ 日時:平成12年11月
○ NASDA 本社(世界貿易センタービル)

(2)微小重力体験飛行(第1回目)
○ 目的:微小重力を実体験することにより、芸術発想、予備的実験、航空機実験の可能性等についての検討の参考にする。
○ 日時:平成13年11月
○ 場所:ダイアモンドエアサービス株式会社(名古屋空港)

(3)NASA現地調査
○ 目的:宇宙開発に関する実体験への理解を深めるため、NASAのケネディ、ジョンソン両宇宙センターのスペースシャトルや宇宙ステーション関連施設の調査、宇宙飛行士や技術者との意見交換、およびロケットの打上げ見学を行った。
○ 日時:平成14年8月

(4)国土交通省電子航法研究所での意見交換
○ 目的:ISS での宇宙飛行士のこころの状態を知る手段のひとつとしての可能性を探った。
○ 日時:平成15年3月
○ 場所:国土交通省電子航法研究所

(5)微小重力体験飛行(第2回目)


○ 目的:研究テーマについて具体的に航空機実験での検証を行った。
○ 日時:平成14年3月
○ 場所:ダイアモンドエアサービス株式会社(名古屋空港)


2.1 成果報告会

これまでの研究成果について、京都市立芸術大学学生会館にて下記の通り報告会を実施した。

(1)NASA研修報告会
○ 目的:NASA現地調査の結果について報告会を実施した。
○ 日時:平成14年12月

(2)共同研究中間報告会
○ 目的:共同研究の途中成果について中間報告会を実施した。
○ 日時:平成15年12月

2.2 外部発表

 下記の雑誌や報告会での報告・発表を実施した。

(1) 宇宙開発事業団 宇宙環境利用研究システム・センター 年報(平成12年度〜14年度)
(2) 荒木秀二、“宇宙の新たな利用への試み その1”、サイエンス・フロンティア つくば2002 ポスターセッション
(3) Science & Technology In Japan (2003.Vol 22.No85)
(4) 浜田尚子、荒木秀二、”ISSの新しい利用”、第19回宇宙ステーション講演会 (2003)
(5) Naoko Hamada, Shuji Araki, ” Cultural Utilization Promotion for ISS in Japan”, 7th Art Workshop (2004.5)
(6) Fumiaki.Tanigaki,Nanoko.Hamada, "Cultural Utilization Promotion for ISS in Japan",55th International Astronautical Congress (2004.10)

参考資料
(1) 平成10〜12年度委託業務「宇宙ステーション等人文社会学的利用に係る調査研究(その1〜3)」成果報告書
(2) 微小重力空間と芸術表現の未来に関する研究(その1〜2)成果報告書
(3) 宇宙環境利用検討委員会 一般利用分科会中間報告書

2.3 取材等

これまで、研究内容や成果に関する取材結果として、以下の記事等がメディアに掲載された。

(1)京都新聞 2002年2月18日
(2)読売新聞 「サーチ2002」 2002年10月7日
(3)京都新聞 「アート遠近」 2002年12月14日
(4)朝日新聞京都版 「京から発信」 2004年1月3日
(5)毎日新聞京都版 「わくわくアカデミー」 2004年1月14日
(6)NHK大阪「おはよう関西」枠内 2004年01月20日