ホームズ彗星 (17P/Holmes) 大増光の記録
2007年10月29日-2028年1月31日 藤原隆男
一眼デジカメ (200mm 望遠レンズ) で撮影した Holmes 彗星
2007年10月31日〜11月21日の写真の合成
拡散して大きくなった Holmes 彗星
2007年11月23日〜2008年1月31日の写真の合成
Holmes彗星 2007
ホームズ彗星 (17P/Holmes) は,太陽のまわりを約7年で回る周期彗星です。記号の P は周期彗星 (periodic comet) の意味です。 木星軌道の内側を回っていて,7年ごとに太陽に約2AUまで近づきます。ふだんは大望遠鏡でしか見えない暗い彗星です。2007年5月に太陽に約2AU まで近づいたあとも,とくに変化もなく徐々に太陽から離れていました。
ところが,2007年10月24日から25日にかけて劇的に増光し,約17等星であったものが2日ほどの間に2〜3等星の明るさになりました。 この増光は,数十万倍も明るくなったことに相当します。 彗星の表面か内部で爆発的な現象が起こり,ガスと塵が大量に放出されたと思われます。 このような彗星の劇的増光は,1世紀に一度あるかどうかの,とても珍しい現象です(じっさい,ホームズ彗星は前回,1892年に増光し,そのときイギリス のエドウィン・ホームズによって発見されています)。
ホームズ彗星は,10月末の増光後も3等星よりもやや明るい状態を保っています。 ガスが放出されたばかりなので,きれいな丸い形をしていて,直径が徐々に大きくなりつつあります。 まだ尾は見えていません。 このまま見え続けるのか,1〜2週間で暗くなるのか分かりませんが,いまのところほとんど一定の光度を保っています。 肉眼でも見える明るさなので,ぜひこの機会にその姿をとらえてください。
ホームズ彗星はペルセウス座をゆっくりと移動しています。 ペルセウス座を捜すには,北を向いて,カシオペア座からぎょしゃ座の1等星カペラの方へ目を向けるといいでしょう。 図の矢印のように,カシオペア座の「W」の3番目と4番目の星を結ぶ線を延ばすのが分かりやすいかもしれません。 真夜中だと天頂近くに来ています(夕方は北東の空)。ペルセウス座がわかったら,ホームズ彗星はすぐに見つかります。 ホームズ彗星は,肉眼では星のように見えていますので,星座の星との区別がつきにくいでしょう (11/8追記:その後,拡散して大きくなったので,肉眼でも丸くぼんやりと見えるようになりました)。
観望には双眼鏡(できれば対物レンズが大きい,天体用のもの)がおすすめです。 双眼鏡で見ると,ぼんやりとにじんでいて星とは異なるのですぐに分かります。 10末は月がまぶしくてペルセウス座を捜すのもむずかしいですが,11月になって月が東へ去ると見やすくなるでしょう。 バルブ撮影ができる機種なら,デジカメを三脚に固定して数秒〜30秒の露出で写ります。 ホームズ彗星が,このままの明るさを保つのか,ガスや塵が流されて尾が見えてくるのか,今後の変化が注目されます。
2007/11/8 追記:その後も3等よりやや明るい光度を保っていますが,拡がったぶん淡くなって市街地では見づらくなってきました。
2008/12/5 追記:まだ3等前後の光度を保っています。ずいぶん拡がりました。
2008/1/31 追記:拡がって暗くなりました(4等〜5等)。空が十分暗いところでは,天体用双眼鏡でかろうじて見えます。
Holmes 彗星は,2007年12月現在,ペルセウス座を移動している
* 図の作成には「ステラナビゲータ」を使用しました
Holmes 彗星の軌道
* 図の作成には「ステラナビゲータ」を使用しました。
補足−彗星とは
彗星は,直径数km〜10kmの,氷を主成分とする天体です。 太陽系ができたときに最初に生まれた「微惑星」という天体の生き残りと考えられています。 彗星は太陽系の外周部にたくさんあります(彗星の巣)。 これが,ときたま太陽に接近すると,ガス(主成分は水蒸気と二酸化炭素)や塵が表面から放出され,太陽からの光の圧力や太陽風で太陽と反対側に流されて尾 が見えるようになります。 周期彗星は,彗星が太陽に接近したときに,たまたま木星や土星などの大きな惑星のそばを通って軌道が変えられ,太陽の近くをぐるぐると回るようになったも のです。 周期彗星では,周期76年のハレー彗星が有名です。
リンク
AstroArts の
ホームズ彗星(17P)ギャラリー
には,ホームズ彗星の投稿写真があります。
国立天文台の
ホームズ彗星の大増光
には,解説記事と写真があります。
吉田誠一氏の
ホームズ彗星 17P/Holmes (2007)
には,光度の観測値のグラフがあります。
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