画像の保存形式


ビットマップ

ペイント系のソフトウェア(たとえば PhotoShop)は,ピクセルの集まりでできた画像を扱う。 このような画像ファイルは,RGB 成分の強さを表す何ビットかのデータが順に並んでいるので 「ビットマップ」と呼ぶ。 画像のデータを座標などの数値で表現するドロー系のソフトウェアのデータを「ベクトルデータ」と呼ぶのに対して, ビットマップデータを「ラスターデータ」と呼ぶこともある。 ラスターとは,点や線(走査線)の集まりででできたものという意味である。
ビットマップデータの保存形式には,以下のようなものがある。

JPEG 形式 (拡張子 .jpg
JPEG (ISO Joint Photographic Experts Group) 形式。 ISO が開発した汎用の画像形式。ブラウザが標準でサポートするので,ウェブで広く使われている。 また,デジタルカメラや携帯写真の保存にも使われている。 圧縮率が高く,ファイルサイズが数分の1〜数十分の1と小さくなるのが特徴。 その代わり,元のデータに戻せない不可逆圧縮アルゴリズムが使われており,画質は多かれ少なかれ劣化する。 画質あるいは圧縮率は,保存のときに選ぶことができる (Photoshop のばあい,画質 0〜12)。 高画質で保存すれば,劣化は実質的にはほとんど問題にならない。 写真などのフルカラー画像の保存に適している。 急に色が変化する部分でブロックノイズやモスキートノイズとよばれるノイズが発生する(とくに低画質のばあい顕著になる) ので,イラスト的な図の保存には向かない。 イラスト的な図の保存には,PNG 形式か GIF形式 (256色以下のみに対応) が望ましい。
通常は RGB モードで保存するが,CMYK モードに変換してから保存することもできる。 写真を Illustrator や InDesign に配置して印刷原稿とするときは,CMYK モードに変換したあと,JPEG 形式のままで保存するか (たいていの印刷では JPEG 形式でも可),後述の EPS 形式で保存するとよい。
また,保存するとき「プログレッシブ」を選ぶと,ウェブで見るとき徐々に低画質から高画質になるように表示される。

JPEG 2000 形式 (拡張子 .jp2, .j2k
JPEG の改良版。JPEG に比べて,画像の劣化が少ないのが特徴。とくにブロックノイズはほとんど現れない。 また,画像の劣化がない保存形式 (ロスレス) を選ぶこともできる。 Mac OS X や Adobe 製品 (Acrobat, Photoshop など) は対応しているが,ウェブブラウザでは対応しているものが少なく,普及はこれからというのが現状 (2014年現在)。

GIF 形式 (拡張子 .gif
パソコン通信の CompuServe (AOL に買収された) が普及させた圧縮画像形式。 ウェブで広く使われている。 インデックスカラー(パレットカラー)モードの画像を保存するための形式で,使える最大色数は256色 (8ビット)。 それ以上の色を含む画像では,保存する前に減色する必要がある。使える色数が限られているので,色数が少ないイラスト的な図の保存に適している。 データは圧縮されている。
GIF87a,GIF89a という内部バージョンがあり,GIF89a ではインデックスカラーのうちの1色を透明色に指定することができる。
まず粗く表示してから徐々に細かくする表示する,ウェブ向けの「インターレース」形式で保存することができる。
何枚かの GIF 画像を合わせて,GIFアニメーションというパラパラアニメを作ることもできる。 GIF アニメ作成のためのフリーソフトが出まわっているので利用するとよい。 GIF アニメ は Adobe ImageReady や Adobe Photoshop でも作ることができる。

PNG 形式 (拡張子 .png
Portable Network Graphics を略したもので,'ping' と発音する。 一時期 GIF が著作権フリーでなかったため,これに代わる汎用形式として開発された。 イラスト的な図の保存に適する。 インデックスカラー (256色) だけでなくフルカラーの画像を保存することもできる。 また,インターレースや透明色にも対応している。 ブラウザが標準で対応しているので,ウェブで広く使われている。

Photoshop 形式 (拡張子 .psd
Adobe Photoshop 独自の形式。 圧縮されていないので,ファイルサイズは大きい。 バージョンによって形式が異なるので,古いバージョンを使っている人には古い形式で渡さないと読めない。 RGB, CMYK モードのほか Lab モードや 16 ビットモードの画像も保存することもできる。 また,レイヤー (画層) にも対応している。 何層ものレイヤーを含むデータでは,ファイルサイズが巨大になるので注意。

EPS 形式 (拡張子 .eps
Encapsulated PostScript という一種の PostScript ファイルにビットマップを埋め込んだもの。 ふつう CMYK モードで保存する。 CMYK モードの EPS は,Illustrator や InDesign に配置して,印刷業者に渡す目的で使われることが多い。
データを文字として埋め込むアスキー形式と,16進数で埋め込むバイナリ形式がある。 アスキー形式は最も汎用性が高いが,ファイルサイズがバイナリー形式の倍ほどある。
Photoshop EPS 形式で保存するときは,非圧縮形式 (アスキー/バイナリ) のほか,JPEG 圧縮して保存することもできる。 JPEG 圧縮すると,ファイルサイズをかなり小さくするすることができる。
保存するとき,データ本体とは別に低画質の「プレビュー画像」を含めることもできるが,これは古いバーションの Illustrator との互換性のために残された機能で,ふつうはプレビュー画像を含める必要はない(印刷所によっては,プレビュー画像を要求するところもあるが)。
Photoshop EPS 保存画面  Photoshop EPS 形式の保存画面
EPS 形式には,通常の EPS のほか, DCS 1.0 や DCS 2.0 という形式がある。DCS は Desktop Color Separation の略で,これを選ぶと色版ごとのファイルに分けて保存される。DCS 2.0 は,特色インクを使うときの形式。

TIFF 形式 (拡張子 .tif
Tagged Image File Format を略したもので,Aldus (Adobe に買収された) が開発した汎用の形式。 非圧縮のまま保存するほか,LZW 圧縮で保存してファイルサイズを小さくすることもできる。 モノクロ2値画像 (高解像度) を印刷業者に渡すときの標準的な保存形式として一般的に使われる。

Windows Bitmap 形式 (拡張子 .bmp
Windows の標準画像形式。圧縮されていないのでファイルサイズが大きい。

PICT 形式 (拡張子 .pct, .pic
Macintosh のかつての標準画像形式。

* 印刷業者に写真などのビットマップ画像を含む原稿を渡すときは,印刷時のサイズで 350 pixel/inch 以上の解像度が必要。 モノクロ2値画像のときは 1200 pixel/inch 以上の解像度が必要。
* Illustrator や InDesign の印刷原稿を,それぞれの標準保存形式のほか,PDF/X-1a:2001(Japan) に準拠した PDF 形式でも受け付けるところが増えてきた。


参考: JPEG 画像のノイズの例
JPEGノイズ1
    JPEGノイズ2
低画質 JPEG 画像の
ブロックノイズ(拡大図)

    モスキートノイズ(拡大図)
色が急に変化するとノイズが出る。
このような図は PNG か GIF で保存
するべきである。



参考: JPEG 2000 画像の例
JPEG高画質
JPEG低画質
JPEG2k低画質
高画質 JPEG
(ファイルサイズ 72KB)
低画質 JPEG
(ファイルサイズ 27 KB)
低画質 JPEG 2000
(ファイルサイズ 25 KB)
本物の JPEG 2000 はこちら


参考: 画像ファイルのサイズ

圧縮されていないフルカラー画像のばあい,ピクセル (画素) あたり 24 ビット=3バイト のデータが必要なので,
  ファイルサイズ(バイト) = ピクセル数 × 3
となる。 たとえば,1600×1200 ピクセル (約200万画素,2メガピクセル) の画像では,
  1600×1200×3 = 1920000×3 = 5760000 バイト (6MB 弱)。
これは正味のデータサイズであるが,これにデータ形式特有のヘッダがつくので,実際のファイルサイズはこれよりもわずかに大きくなる。

これを JPEG で不可逆圧縮すると,ファイルサイズを大幅に小さくすることができる(圧縮率は画質による)。 可逆圧縮 (JPEG 以外の圧縮) では,圧縮率はあまり大きくないが,ファイルサイズはある程度小さくなる。 とくに,白黒2値画像やイラスト的な画像のように同じ色が連続するばあいは,圧縮率がよくなる (いっぽう,色の変化が激しい画像では,圧縮をかけるとかえってファイルサイズが大きくなってしまうことがある)。

ベクタグラフィックス

ピクセルの集合であるビットマップに対して,座標の数値の集まりとして記述された画像ファイルをベクタ画像という。 曲線でできた画像や,曲線で囲まれた中を色で塗りつぶした画像の組み合わせでできているのがふつうである。 文字のフォントもアウトラインでできているので,ベクタ画像に含めることができる。 ベクタ画像は数値でできているので,拡大縮小が自由にできる (拡大してもジャギーが出ない) のが大きな特徴である。 ドロー系ソフトウェアの画像は,ふつうベクタグラフィックスのデータとして保存される。
Adobe Illustrator 形式 (拡張子 .ai
Illustrator の標準保存形式である。 Illustrator のバージョンによって形式が異なるので,新しいバージョンで書き出したものが古いバージョンでは読めないことがある。中身はテキストなので,エディタで開いて内容を確認することができる。 Adobe が開発したプリンタ用の言語である PostScript で書かれている。

PDF 形式 (拡張子 .pdf
Adobe が開発した Portable Document Format (PDF) は文書交換用に開発された汎用の形式で, ビットマップ画像を含めることができるが,基本はベクタ画像である。 Illustrator で保存するときに PDF 形式を選ぶと,ファイルサイズが小さくすることができ, オプションで Illustrator で編集可能な PDF として保存することができる。 グラフィック関係だけでなく, 多くのアプリケーションが PDF 出力に対応している。 PDF の汎用機能だけでできている PDF は Illustrator で開けることがある。

PostScript 形式 (拡張子 .ps
Adobe が開発した PostScript という言語で書かれた汎用のファイル。 PostScript (PS) 言語が解釈できるアプリケーションで開くことができる。 Illustrator も PS ファイルに対応している。 また Illustrator の AI ファイルは PS ファイルの一種である。

SVG 形式 (拡張子 .svg
Scalable Vector Graphics のこと。 汎用のベクタ画像形式。 テキストでできたファイルなので,エディタで開くと中身が見える。 W3C (World Wide Web Consortium) によって開発されたウェブ用の画像ファイルで, 拡大縮小が自自由なのでグラフやイラストなどの広く使われている。 もちろん,そのままウェブの画面に配置することもできる。 Illustrator には SVG ファイルをエクスポートする機能がある。


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