G.H. Darwin: The tides and kindred phenomena in the solar system 修正案

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並進慣性力のことを 大きさと向きが等しい遠心力 というようになったのは, George H. Darwin 大先生が一般向けに数式を使わずに書いた潮汐現象の解説書 The tides and kindred phenomena in the solar system (1898) がルーツだと思われる。 Darwin は, 共通重心の周りを並進円運動する地球に現れる並進慣性力を, 一般の人にあまりなじみのない慣性力を使う代わりに, わかりやすい遠心力を使って説明したが, これは遠心力の誤用だ。 Darwin はおそらく, 遠心力と同じ類いの力 (つまり慣性力全般) という意味で「遠心力」を使い, 本来の遠心力ではないことを表すために「大きさが等しく平行な (equal and parallel)」と断り書きを入れたと思われる。 これを見た専門家たちが, この慣性力を遠心力と呼んでもよいのだと誤解してしまったのでないだろうか。 本当は, centrifugal force ではなく inertial force と呼ばないといけない。 大先生の本に間違いがあることを指摘しておかないと, 誤解がいつまでも解消されないおそれがあるので, あえて修正してみたわけだ。


G.H. Darwin:  The tides and kindred phenomena in the solar system (First edition 1898)

p96 p97 p98 p99 p100

* G.H. Darwin の本は Darwin Online, Project Gutenberg などで入手できる。


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T. Fujiwara 2022/02