JAXA EPO -水の球を用いた造形実験- 球面の振動


液体の球の表面が表面張力によって振動するとき,その周波数(振動数ともいう)はつぎの式で与えられることが知られている。

ν = (1/2π)[l(l-1)(l+2)γ/(ρr^3)]^(1/2)


ここで,ν は周波数, ρ は液体の密度, r は球の半径, γ は表面張力である。球面の振動のようすは「球面調和関数」で表される。l は振動のパターンの節の数にあたり,式から l が大きいほど周波数が高いことがわかる。1方向のみに振動を与えたときの球面調和関数は軸対称 (回転対称) で,そのパターンは l によって下図のようになる。 図の濃淡は振幅を表している。すなわち,白が凸であれば黒は凹を表し,ちょうど中間のグレーが振動の節にあたる。

SHF (l, m=0)

以上は,振動の振幅が十分小さいときに成り立つ話である。 振幅が大きくなると,周波数は上の式より若干小さくなることが知られているが,式はよい近似で成り立つと考えてよい。

水の密度 ρ と球の半径 r (または直径 d = 2r ) と表面張力 γ と節の数 l を与えれば,この式から振動の周波数を求めることができる。水の表面張力は,室温では約 73 mN/m (ミリニュートン/メートル) であるが,水温が上がるとやや小さくなる。 また,界面活性剤を加えると 40 mN/m 前後にまで低下する。 下のグラフは,パターンごとに周波数(Hz) を球の直径 d (cm) の関数として表したものである。表面張力は γ = 40mN/m とした。

直径-周波数 (γ=40)

ちなみに、直径 d = 8cm、 表面張力 γ = 40 mN/m のときの周波数 (Hz) はつぎのようになる。

l
周波数 ν  (Hz)
(d = 8 cm, γ = 40 mN/m を仮定)
3
0.69
4
1.07
5
1.49
6
1.95


実際に軌道上で行われた実験では d = 8 cm であった。界面活性剤を加えたあとの水の表面張力がこの図や表と同じ γ = 40 mN/m 前後であったとすると,球に与えられた振動の周波数と球の変形の関係がよく説明できる。



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