アインシュタインはたびたび, 光のエネルギーと運動量の関係を使ったわかりやすい方法で, 質量とエネルギーの等価性の式を導いている。 ここでは, 1946年に Technion Journal という科学雑誌に掲載されたアインシュタインの証明を紹介しよう。
まず, 静止した質量 \( M \) の箱があって, その箱に同じエネルギーをもつ光の塊が \( x \) 方向の両側から当たって吸収されるとする。 それぞれの光のエネルギーがともに \( E/2 \) であるとすると, 箱は両側から同じだけの光の圧力を受けるので静止したまま動かないはずだ (図1)。
こんどは \( z \) の負方向へ速度 \( v \) で運動する座標系から同じ箱を見るとする。 このとき箱は速度 \( v \) で \( z \) 方向へ移動しているように見える。 また,光の塊もわずかに上向きの角度で箱に当たるように見える (図2)。 ところで,電磁気学からエネルギー \( E \) の光がもつ運動量は \( E/c \) であることが知られている。 また光行差の理論から, 光の速度の \( z \) 成分は, \( v \) が光速度 \( c \) に対して十分小さいという近似のもとで光速度の \( v/c \) 倍になる。 したがって斜めに走る光の塊がもつ \( z \) 方向の運動量成分はそれぞれ \( E/(2c) \times (v/c) = Ev/(2{c^2}) \) となる。 その結果, 光の塊の運動量の \( z \) 成分は合わせて \( Ev/{c^2} \) となる。
光の塊が箱に当たって吸収されたあとの箱の質量を \( M' \)とすると, 観測する座標系は一定の速度で運動しているので, 箱は光を吸収したあとも同じ速度 \( v \) で運動しているように見えるはずだ。 したがって, 運動量の保存則よりつぎの式がなりたつ。
これより,
すなわち, 光を吸収した箱は光のエネルギーの分だけ重くならなければならない。 そうでないと, 光を含めた系全体の運動量保存則が成り立たないのだ。 いま, 増えた質量を \( m \) とすると, 上の式は \( m = \frac{E}{{{c^2}}} \) と書ける。 すなわち \( E = m{c^2} \) が成り立つことがわかる。 光のエネルギーが質量に変わったわけだ。
以上のようにしてアインシュタインは電磁気学の法則から \( E = m{c^2} \) が成り立つことを示した。 ところで吸収された光のエネルギーはどうなったかというと, 内部エネルギー (たとえば熱エネルギー) として箱に蓄えられているはずだ。 その内部エネルギーの分だけ箱が重くなったわけだ。
E=mc2 に戻る
T. Fujiwara, updated 2024/11